handmade

日記ですな。私が生きた証。 私が自ら作り上げていく人生。 第3幕。

すじ書

あるクラスで人気のある男の子は「ものまね」が得意で

先生のマネからテレビタレント、果ては動物のマネをすることでみんなを楽しませ、笑わせることのできる少年。

ある時同い年くらいの少女が近くにやってきて

その少女もまたその男の子に楽しませてもらい、だんだん好意をもつ。

でも少女はどこか気づいてた。ものまねばかりしてる彼の本当の顔は声は、どこにあるんだろう?

心はどこにあるんだろう?と。

ねぇ、あなたを見せて

といっても彼はおどけてばかり。楽しいものまねを見せてくれるだけ。

彼もまた、本当の自分がどこにいるのか、何であるのかなんてわかっていないのだ。

今まで好意を持ってくれた女の子も何人かはいてくれた。

でも本当の僕だとか、そういうことへの興味よりも。

ただ楽しい人だからっていうのが主な理由だと思う。

彼女もまたきっとそうなのだろう、と彼は思った。

だから難しいことは考えず、楽しませることで自分も楽しんでた。

それでも彼女は

ねぇ、あなたを見せて、と言ってきた。

僕がいくらものまねをしても首を振った。

はっきり言ってそんなの僕もわからないのに。

でも彼女といるときは比較的僕は楽でいられた。ネタを求められてはいないからかもしれない。

でも僕はそうすることでコミュニケーションをとってきたし、それ以外にコミュニケーションをとる術を知らない。

ある日

ちょっとはでてきたね、と彼女は言った。

僕は意味がわからなかった。

何か僕に変化はあったのだろうか。

またある日

ふたりで出かけた。

そうそうその調子、と彼女は言った。

そういった瞬間、鈍い音が飛び込んで来た。

その一瞬。僕が目を閉じて、また目を開けるまでに

彼女はそこに横たわっていた。

僕はすぐにかけつけた。

ねぇ、大丈夫?何があったの?

彼女は返事をしなかった。

僕の中の何かが音を立てて崩れた。

僕の中で固く守っていた、でもそれと意識できなかった部分が、一瞬のうちに崩れた。

僕は叫んだ

なんて言ったかなんて覚えてない。

声になんてならない。

ただただ目の前の現実へじたばた足掻いているだけだった。

彼女を強く抱きしめる。

まるで世界が終わりの日を迎えたみたいに。

微かに、君がうなずいた。

僕の頬には涙がつたっていた。